空色硯 sorairo-suzuri

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<<   作成日時 : 2008/07/05 14:18   >>

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聖王教会のありふれた午後。

呆ーっと空を見上げるカリムの横で、シャッハが雑誌をめくっている。
先程まで管理局高官たちを相手にしていたのだから、息抜きは必要なのだ。


「……はあ」

十回目。
深々と溜息をついたカリムの様子に気付き、彼女は雑誌から目を――――離さなかった。

ちらちらと恨みがましい視線が飛んでくるが気にしない。

「はぁ」

十一回目。
ずずっと冷め切った紅茶を啜り、黙々とページをめくる。

何故か泣きそうな雰囲気も感じたが、やっぱり気にしない。
そんな暇はないから。



「……は」
「ああ、そう言えば」

十二回目の途中で、シャッハは思い出したように顔を上げた。
嬉しそうな気配はどうでもいい。

「溜息ばかりつく人は、早く老けるそうですね」

「――――!」

激しい動揺の気配が伝わってくる。
これで、幾分静かになるだろう。



「さてと」

雑誌を閉じたシャッハは、腰を上げる。
必要なことはあらかたメモに書き留めた。
本日の午後はオフ。多少は気合いを入れねばなるまい。

振り向くと、ソファで毛布にくるまったカリムが泣いていた。
いつもの事である。

「では騎士カリム。私は出かけてまいります。午後には騎士シグナムが来る予定ですので、仕事は片付けておいて下さい」
「……手伝ってくれないの?」

上目遣いで見上げる相手に、シャッハは目を細めた。

「私は昨晩深夜までかかって、貴女の三倍以上の業務を片付けましたが」
「で、でも」
「それに、今日の半休は二週間も前に申請しておりまして。残念ながら御希望には添えません」
「……そう」

冷たい眼差しに見据えられ、カリムは慌てて毛布を引き上げた。
ちなみに彼女は、お肌に悪いからと教会の子供たちと同じ時間に寝てたりする。

「じゃ、じゃあ、帰ってきてからならお願いしてもいいわよね。どこに行くの?」
「私にも分かりません」

しれっと言うシャッハ。

「どうして?」
「スーツを新調するのは私ではありませんから。それに付き合った後は、街の散策と食事の予定が入っています」
「しょ、食事って、誰と?」
「ああ、彼のことですから、食事の後も真っ直ぐ戻るとは限りませんね」
「まさか」

慌ててカレンダーを見ると、今日の日付に花丸が付いている。

すっかり忘れていたが。
彼女の義弟が久々に戻る予定だったのだ。

「それでは失礼します」
「ちょ、ちょっと待って! ロッサとデートなんて、私は聞いてないわよ!?」
「些細な事です。お気になさらず」

バタン、と扉は無情に閉まった。




眩暈のする頭を押さえる。

「なんで? どうして?」

はやても、シグナムも、なのはさんも!

まあシグナムは大年増だから、除外してもいいけど。
他の二人は自分よりも若いのに!

「みんなズルイじゃない!」

立場があろうが何だろうが、本音は本音。
ましてや同年代の義妹なんて出来てしまったら。自分はいったい、どーしたらいいのか。

毛布を頭からかぶる。叫ぶ時はこうでもしないと、衛兵がすっ飛んでくるから。

思いっきり息を吸って――――



「わ、私だって、お嫁さんになりたいのに――――っ!」

と、悲痛とも滑稽ともとれる事を天に向かって叫んだ彼女は。



「きゃああぁっ!?」
やっぱりいつもの様に、ソファから盛大に転げ落ちた。

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