空色硯 sorairo-suzuri

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<<   作成日時 : 2008/07/05 14:21   >>

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多数の空間モニターを開いたティアナは、忙しげにパネル操作を続けていた。
使用した演習場の後処理である。



「いいのかなあ」

赤バットを下げたスバルが、首を傾げながら戻ってくる。

「なんでよ。ツッコミは大歓迎って言われたでしょ?」
「う、うん」
「高ランク魔導師相手なんだから、バットでも足りない位よ」
「それはそうなんだけど」

今日はいつもより手応えがあり過ぎた。
いくらなんでも、幻術魔法を使っての不意打ちはツッコミと言えるのだろーか?

「部隊長たち、まだ浮かんでこないよー」
「今頃、海中で取っ組み合いでもやってんじゃない?」
「そーかも」

まあ気にするだけ無駄である。
どうせあの人たちは、怪我一つしやしない。




と。
すっきりした表情のなのはが、上空から降りてきた。

相変わらず目の下に真っ黒な隈が浮いてる。万年過労は高町教導官の代名詞だ。
が、もちろん仕事のせいではない。


「それじゃ私は戻るからねー。ティアナ、後始末お願いしていいかな?」
「午後はどうするんですか?」
「うーんとね、明後日締め切りの書類を徹夜で片付けて、明日の午後から半休取ろうかなって思ってるけど?」

「あれえ?」

スバルは首を傾げた。
なのはが提出していたお休みは明後日だ。徹夜してまで頑張らなくてもいい気がするのだが。

「それはねえ」

にへらっと笑うなのは。

「明後日は久しぶりにユーノくんとお出かけなの。だから明日中に、ヴィヴィオの服とか見てあげたいんだ」
「そうなんですか。でも、無理しすぎなんじゃあ」
「だって、週一回しかチャンスが無いなんて酷すぎると思わない?」

ただでさえ多忙のユーノは、休みの日が不確定だ。
出来る限り休みを取ってチャレンジしないと、会うことすらままならない。
でも、有給には限りがある。

つまり。
仕事時間を圧縮して、休みを増やすしか方法が無い。
「だから頑張らなくっちゃね」


「ほどほどにして下さいよ」
モニタから目を離さず、ティアナはぼそっと呟く。

「もう無理できるような歳じゃないんですから」



間。

(ひいっ!?)
不意に溢れかえった冷気に、スバルは悲鳴を飲み込んだ。


「…………それは、どういう意味かなあああああ?」

底冷えのする声が、殷々と響き渡る。
無敵で最強な魔力が吹き荒れる前兆だ。

さっきまでの陽気が、氷点下に落ち込んだようである。



しかし。
ガタガタ震えるスバルの横で――――ティアナは眉一つ動かさなかった。

「母親の自覚を持って下さいって言ってるんですけどね。ヴィヴィオに心配掛けるのはどうかと。――ああ、それと」

空間モニターの一つを、なのはの前にスライドさせる。

「?」
「この前言ってたブティック、なかなか良さそうなのが入ってましたよ」
「あ、本当だ。かわいーね、これ」

あっという間に冷気が散り、なんだか低調な雰囲気が戻ってくる。

「あたしの名前で取り置きしてありますから、明後日までならOKですけど……譲りましょうか?」
「え? いいの?」
「あたし、次のオフは週末ですし。それに、こういう服は一緒に買いに行った方がいいと思いますよ」
「そ、そお?」
「化粧直しも兼ねますからね。途中でリフレッシュした方が、相手も喜んでくれるかも」
「そっか……そーだね! ありがとうティアナ!」

嬉しそうに手を振ったなのはが、隊舎へ飛び去っていく。



「ふえー」
何と言ったらいいのやら。
スバルは感心したように頷いた。

「やっぱりティアは凄いなー。……あれ? アルト?」

隊舎の方を眺めていると、包みらしき物を持ったアルトが走っていく。

向かう先は――――


「えっと、もしかして……」
「ああ、ヴァイス陸曹にお弁当を届けるんでしょ。午後はシグナム副隊長を教会に送っていく予定だから」
黙々と作業を続けながら、さらりと言うティアナ。



「……あのー」

スバルは恐々と横顔を覗き見る。

「言いたい事は分かるけど、陸曹は狙撃手よ。最後には一撃で決めるはず。――それにね」
「それに?」

作業を終えたのか、次々とウインドウが閉じていく。




「ランスターの弾丸が、目標を逃すわけないっての」

最後のモニターを消したティアナは、無表情のまま呟いた。

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