空色硯 sorairo-suzuri

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<<   作成日時 : 2009/05/17 23:54   >>

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704式サイズのヘリコプターよりも、小回りの利く小型を運用した方が良いかもしれない。
今日みたいに運ぶ物が人員一名となると、少々もったいない気がするから。

第一。

「……狭い方が、お互いの距離が近くなっていいと思うのだが」

二人乗りだったりすると最高である。



(しかし、誰一人として言い出さんな)
分厚い装甲に背中を預けたシグナムは、最終点検を行うパイロットを眺めていた。

点検だけならまだマシなはずだが。
ウエス片手に、いらんところまで丁寧に磨いている姿を見ると――――何だか、こう。

「叩っ斬りたくなるな」
「? 何か言いやしたか、シグナム姐さん」
「いや何も」

ふい、と視線を逸らした相手に、ヴァイスは怪訝な表情を浮かべた。
とはいえそれも一瞬のことで、すぐに作業に戻る。鼻歌交じりで実に楽しそうだ。

「…………」

そんな彼の後ろで、すらりと愛刀を抜く不逞浪士。
どこぞのだんだら模様が必要な事態である。

が。

「えいやあ!」
弾道飛行で落ちてきた影が、辻斬りに見事な一撃を決めた。



「――――!?」

さすがの将とて、脳天にかかとを落とされてはたまらない。
無言でのたうちまわった後、何事も無かったかのように立ち上がる。

「何をする」
「それはこっちのセリフですっ! いったい何しよーとしてたですか!」
「何かあったのか?」
「また他人事のよーに。……ヘリに嫉妬してもムダですよー」
「誤解だ」

冷ややかな眼差しのリインから、白々しく目を逸らす素浪人。

「暇潰しに素振りをして、どこが悪い」
「ヒマなんですか」
「いや無茶苦茶忙しいが。……それにしても」

先程の蹴りで、髪に海水がついてしまった。

「何故びしょ濡れなのだ? 海水浴にはまだ早かろう」
「……聞きたいですか?」


「いや別に」
「なんで聞かないです!? って言うか聞け――――――っ!!!」





そんな背後の喧噪をものともせず、黙々と704式を磨くヴァイス。
彼にとって至福のひとときである。

そこに、

「せんぱーい!」

とたた、と軽やかな足音を響かせて、アルトが駆け寄ってきた。
両手で捧げるように持っているのは、いつものお弁当だ。

「おめえなあ、勤務中は階級で呼べ、階級で」
「えー」

彼女は、心外そうに口を尖らせた。

「ヴァイス陸曹を『先輩』って呼べるの、わたしだけなんですよ」
「いや、ンなこと言われてもよ」
「嬉しくないですか? 可愛い女の子にセンパイって呼ばれるのって」
「む」
「しかもお弁当付きです」

「うーむ」

腕組みして考える。
作業に没頭して昼抜きだったから、弁当箱が食欲をそそる。

可愛いかどうかは別として、後輩の女の子に毎日作ってきてもらうというのは?

「なるほど、野郎にとっちゃ理想かもしんねえ」
「でしょ」
「やっぱ後輩ってとこがポイントたけえな」
「わかってるじゃないですか、ヴァイス先輩」



「……なにゆえカートリッジをロードしたですか?」
「いや、何だか寒くてな。炎で暖まろうかと」
「レヴァンティンはマッチじゃないと思うです」

そもそも、こんないい天気で寒いわけがない。

「まあ、それはそれとして。せっかくの魔力がもったいないな」
たいまつの如く燃えさかる愛刀。カートリッジもタダではない。

「やはりムダ使いはいかん」
「自分でやったくせに」
「一撃どうだ? あっという間に乾くと思うのだが」
「全力でお断りですっ!!!」




「お、そろそろ時間だな。ンじゃ、ちょいと行ってくら」
「はーい。いってらっしゃーい」

ぱたぱたと手を振ったアルトは、右手をぐっと握った。まさに手応え有り。
釣り竿のリールを巻き上げる気分で振り返る。
すると、リインに怒鳴られながら平然と耳を塞いでいる大年増と目が合った。

にっこり笑った彼女は、親指をぐっと立てる。

「…………」
無言で肩を竦めたシグナムは、左手の親指を立て返すと。



そのまま、ぐるりと真下に向けた。










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