空色硯 sorairo-suzuri

アクセスカウンタ

zoom RSS for PDA 08

<<   作成日時 : 2009/05/17 23:56   >>

トラックバック 0 / コメント 0

いたって平和に過ぎた施設内の半日後。


一通り映画を見終わった彼女たちは、リラクゼーションルームに向かって歩いていた。
先導するのは満足そうなギンガ。
本日使用したディスクを入れた紙袋を、胸元で大事そうに抱えている。
大っぴらに異世界の物を持ち込める場所は限られる上、これは彼女の大事なコレクションだから。

――――主な提供者は、フェイト経由のエイミィだったり。



続く更正組の会話は、やや興奮気味だ。

「いやー、やっぱ映画って最高っスね」
「あたしは、アクションより冒険物が好きだな」
「……それ、ある意味同じじゃないスか?」

「そう言われると、そんな気もする」

妻の浮気を疑ったスパイの行動が、徐々にエスカレートしていくアクション映画に興奮したウェンディ。
ロマンな石にまつわる冒険が楽しかったらしいセイン。

「高い山を越えていくのって、あんなに凄いもんなんだな。ライナーじゃあそこまで上がれねえよ」
「そうだね」
「海の底だって行ったこと無いからなー。魚のも良かったぜ」
「でも、海にはあれもいるかも」
「げ。そうだった」

「あれは怖い。何だか、あれには砲撃も効かない気がする」
「んなこたねえだろ。効くとは思うけどよ……あたしも、近寄りたくはねえなあ」

意外にもドキュメンタリー風映画で感動していたノーヴェに、顔を青褪めさせたディエチが応じる。
彼女が言っているのは、別の作品で戦闘ヘリのパイロットをしていた役者が主演の映画だ。
海モノでは古典で定番とのこと。

「――ちなみに、あれとは何でしょうね?」
「鮫」

聞こえた内容に疑問を抱いたディードに、簡潔に答えるオットー。



「みんな、気に入ったんだなー」
「うん」

感心して頷くアギトの横で、ルーテシアは微かに微笑んだ。
本も悪くないが、こういうのも分かりやすくていい。

「たくさんのお話があって面白い。きっと母さんも見たんだろうけど、どんなのが好きだったのかな」
「ルールーは何でも好きなんだろ? だったら、たぶん同じだって」
「そう?」
などと和やかな会話が続く後ろで、

「しかしだな」

何やら難しい声が響く。

ルーテシアとさほど背格好の変わらない――しかし、この面々では精神的に最年長のチンクである。
彼女は、ここのところ特定のジャンルばかり鑑賞していた。

「何でも、とは言い切れんかもしれん」
「なぜ?」
「何かあったのか?」

「少しばかり、疑問があるのだ」

二人の視線に頷いて応じた彼女は、思案気に首を傾げたあと。
前を行く者に、意を決して問い掛ける。

「なあ、ギンガ」
「? なあに?」
「こういった映像を鑑賞することは、とても良いことだと思うのだが……いささか偏っているジャンルがないか?」

「かたよってる?」

言われたギンガは、不思議そうに目を丸くした。
持ってきた映像は、上司や先輩方に頼んで集めてもらい、そこから彼女自身が吟味を重ねて選んだ物だ。
敢えてこことは異なる世界から持ち込んだから、先入観や現実との違和感は希薄なはず。
実際、楽しんでくれていると思ったのだが。

「ジャンルも結構広範囲にしたはずなんだけど、何かおかしな作品が混ざってた?」
「いや、混ざっていたというか」

言いたいことを頭で整理しようとするチンク。
小さな体格には、まったく似合わない大仰な仕草で腕を組む。

「たぶん、私が見ていたジャンル限定で、内容が変に偏っているんだ」
「確か恋愛ものよね? 私も好きだから、結構慎重に選んだはずなのに」
「だとしたら、やはりおまえの主観が原因か」

彼女は、困ったように首を振った。

「私が仕入れた知識が確かなら、本来はハッピーエンドの方が多いのではないか?」
「え? それは、どういう」

「つまりだな」

おかしいなー、と小首を傾げる相手に、溜息混じりの声が指摘する。



「――――何故、全ての作品が三角関係と浮気ばかりな展開で、しかも必ず修羅場になるのだ」










テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

for PDA 08 空色硯 sorairo-suzuri/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる