空色硯 sorairo-suzuri

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<<   作成日時 : 2009/05/17 23:58   >>

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「恋は戦いでしょう!?」

雄々しく拳を振り上げたギンガが、廊下の真ん中で力説する。



「戦って戦って戦い抜いて! 最後に立っていた者が彼氏をゲットできるんです!」
「戦うって、なにも直接つかみ合わんでも良かろう」

見ていてげんなりしそうな修羅場を思い出し、チンクは溜息をついた。
恋愛というものは、別に刺したり刺されたり、捨てたり横から奪ったりばかりではないと思うのだ。
……というか思いたい。

「だいたい、何だってそう攻撃的なんだ」
「攻撃的って?」
「押しすぎると、相手も気後れするだろう?」

前向きなのはいいが、こうまでだといささか過剰ではないか。

「もうちょっと女らしくしないと、男は拾えないと思うが」
「いいえっ! だって、前例があるもん!」
「前例?」

「わたしの母さん!」

ギンガは、きらりと目を輝かせる。

「昔、言ってたの。お嫁さんになるためには、全ての勝負に勝利しなきゃいけないって!」
「……おまえ、それは」

チンクは『何の勝負だ』と聞き返したかったが、後ろからつつかれて断念した。
ついでに、後ろ手でいつもの物を引き取っておく。

「母さんにとっても、厳しい戦いの連続でね。時には弱気になることもあったそうよ」
「だろうな。だがそれは」
「父さんをゲットできたのは、そうやって勝ち抜いた結果なの」
「いや、ある意味では間違っていなさそうだが」
「だいたい、映画でもそうなってたじゃない」

「……ちょっと待て。さっきも言ったとおり、おまえの選んだものには偏りが」
「私はあんな策略とかできないもん。だったら、真っ正面から一撃必倒――――」

「だから、待てといってるだろう」

ごつん、と鈍い音が響く。



「まったく」

あっさり昏倒したギンガに、チンクは諭すように呟いた。
使用した青バットは、ルーテシアに返しておく。

「恋文でも料理でも。他にも、勝負する方法はいくらでもあるはずだぞ?」

「チンク姉、他にもって例えば何スか?」
「そうだな」

問われたチンクは、天井を見上げて考える。
市井で聞くところによると、アレやらソレやらもあるが――ここはやっぱり。

「……色仕掛けとか」

「ええっ!?」
「さ、さすがチンク姉!」
「いやいやいや、こりゃまたストレートっスね」

何気なく呟かれた返事に、聞いたウェンディ以外からもどよめきが上がる。
色気過多な長姉が言うならともかく、一際小柄なチンクだと、想像がまったく追い付かない。

そもそも、想像しちゃってもいいのだろーか。

「でも、チンク姉の色仕掛け……あたしは見てみたいな」
「セイン! てめえ!」
「だったら、ノーヴェは見たくないんスか? 見習うためには必要っスよー」
「だ、だけどよっ! あーいうのは見せ物じゃねえだろ!」
「あーいうのって、どーいうの?」
「そ、そりゃおめえ、例えば――――」


「どーいうのでも、大声で話すことじゃないよ……」

段々過激になっていく内容に、思わず顔を赤らめるディエチ。



「ところで、色仕掛けとは何でしょうね?」
「知らない」
「視線をそらすということは、本当は知っている?」
「本当に知らない」

「なぜ後ろを向くのです。やはり、知っていそうに見えるけど」
「知らないったら知らない」

頬を染めたオットーを、横から覗き込むディード。
どう見ても、知ってて相手を弄っているような感じだが、本当に知らない可能性も捨てきれなかった。
なにせディードだし。

で。



復活したギンガの鉄拳がウェンディたちに降り注いだのは、その直後である。










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